東京高等裁判所 昭和60年(ネ)1602号 判決
しかしながら、≪証拠≫(ただし、後記措信しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、昭和五五年九月二六日ころ川口市大字伊刈九一五番五宅地八二・〇三平方メートル及びその地上の木造スレート亜鉛メッキ鋼板葺二階建居宅一棟を妻洋子との共有名義(控訴人持分五分の四、洋子持分五分の一)で住宅ローンにより購入し、会社に勤務して家族四名とともに生活していたが、ローン以外にも多額の負債を抱え、昭和五七年七月一〇日債権者から右土地建物に対する控訴人の持分につき仮差押を受けたことや、自衛隊入隊中発病した長男安裕(昭和三六年一月八日生)のことなどで精神的に参っていた妻との折合いが旨くいかなくなり、一週間に一度帰宅する程度で家を明けるようになり、同年一〇月ころには全く帰宅しないようになったこと、しかしその後も昭和五九年五月二一日に別の債権者から控訴人の前記持分につき差押を受けたり、住宅ローンや自宅の土地建物を担保に株式会社第一勧業銀行から借り受けた五〇〇万円の返済等に追われていたりしたため、留守宅には毎月生活費を送金するほか時々電話連絡などしていたこと、このような状況の下において控訴人の自宅に本件訴状副本等が同年七月一五日に、また原判決正本が同年一〇月二八日に控訴人あてに送達され、たまたま自衛隊を退職して自宅にいた安裕が控訴人に代わってこれらを受領し、前記郵便送達報告書の受送達者本人氏名欄に控訴人の氏名を代署したこと、洋子は、浦和地方裁判所から控訴人あてに右各書類が送達されたにもかかわらず、控訴人の負債関係のものと思い、努めて避けたい気持からそのまま放置していたところ、昭和六〇年四月一八日被控訴人から原判決正本に基づいて安裕立会いのうえ自宅の動産が差し押さえられ、驚いた洋子は直ちに控訴人の勤務先を探して電話で控訴人にその旨連絡したこと、その後同年七月ころ控訴人と洋子は離婚したことが認められ、右認定に反する証人横尾洋子の証言部分は前掲各証拠に照らし措信しがたい。
右事実によれば、控訴人の住所は昭和五九年七月ないし一〇月当時前記自宅にあったというほかなく、前記郵便送達報告書の記載はともかく、本件訴状等及び原判決正本は、控訴人の長男安裕が民事訴訟法第一七一条にいわゆる同居者としてこれを受領したものと認めることができるから、原判決正本の送達は、控訴人に対し有効になされたものといわざるを得ない。もとより控訴人が現実にこれを了知したか否かは、送達制度の性質上関係がない。
(小堀 吉野 山崎)